「やさしいとまり木」

はじめまして。バロックと申します。私は、臨床心理士の方にカウンセリングの際、文章を書く仕事をしたかったと話すと「ブログを書いてみませんか?」とありがたいお話を頂き、今回ブログを書かせていただいています。拝見して下さる方に興味深いと思えるブログ(コラム)を書いていけたらと思います。よろしくお願いします。

太陽の日差しが眩しく、雨も降らない真夏になりました。

出会いと別れのある季節も過ぎ去り、真夏の今頃になると、環境の変化にも慣れて新しい人生が楽しくなってきた頃ではないでしょうか?環境の変化というと日々の生活の場所や人との縁が変わることもあると思います。そこで、縁についての話をひとつしたいと思います。

縁といえば人との縁を思い浮かべる方が多いと思いますが、物にも縁があります。私は、17歳の頃。書店に立ち寄りバーテンダーという漫画を手に取りました。

当時は、バーテンダーという仕事も知らず、お酒も飲めない年齢なのですが、仕事に対するプロ意識の姿勢を描いている漫画でした。セリフに「世の中に絶対にお客様を裏切ってはいけない仕事がふたつあります。ひとつは医師、薬剤師。もうひとつは、バーテンダー。どちらも処方ひとつで、毒にも薬にもなるものを売っていますから。」「バーテンダーの本当の仕事とはお客様が扉を押して入って来た時より出ていかれる時、ほんの少しだけ幸福になっている。その為の仕事なのです。」

漫画内に出てくる数々のセリフに感銘を受け、お酒がまだ飲めない18歳の時東京のレストランでバーテンダーの仕事をしたことがあります。働き始めで、バーテンダーとも言えない頃上司にノンアルコールカクテルを勉強のために作って頂きました。

ノンアルコールカクテルと言ってもトニックウォーターにライムを入れた言わばジントニックのジン抜きですが、ピールというカクテル技法(皮を捻り香りを表面につける)でまず嗅覚から香りを感じ、飲んだ時、鼻と舌で味覚を感じさせて、カクテルの味になると教えて頂き、それを飲んだ時の感動や気持ち面での高揚感は「あぁ。これがプロのバーテンダーの仕事か」と思いました。

勿論バーテンダーは人と関わる仕事なので、言葉で救われることもあるのでしょうが、何も言わずにお酒を通してお客様が救われることもあると感じました。

現在、私は、バーテンダーの仕事はしていませんが、漫画との縁によりこの体験ができ、人に対して毒ではなく薬になることをしたいと思っています。

カウンセリングを受ける今、言葉の力で心が回復につながり、言葉はカクテルと同じように毒にも薬にもなることが、人生を通して体感しています。私は、バーテンダーという仕事の生き方に憧れ、それを教えてくれた物語に憧れたのだと再認識し、人が自分の言葉を読んだ時、少しの幸福が心に残ればと思い文章を書くことが今の目標になりました。

縁というものは、必要な時に、必要な物、相手と出会い、学びが終わった後、別れが来るのだと桜の季節が過ぎ去り、蝉が鳴く頃に思い耽る日々ですね。

長々とお付き合い頂き、ありがとうございました。

バー=止まり木、テンダー=優しい。たまには、優しい止まり木に立ち寄ってみてはいかがでしょうか?